海外で子供に日本語教育|確実に達成できる目標を作る

こんにちは。スペイン在住のKIKAです。

この記事では、幼少期から高校まで家庭で子供に日本語を教えた経験から、確実な結果を出すための目標づくりについてご紹介しています。

  • 共働き&現地校の宿題、習い事で子供と接する時間が少ない。
  • 近くに日本人学校や日本語補習校がない。
  • 現地の言語(スペイン語)を母語にしている。
  • 日常、子供と日本語で話すのは、ほぼ私ひとり。

そんな状況でも、

KIKA

娘は14歳のときに日本語能力検定試験1級(N1)に一発合格、日本語会話も流暢です。また、趣味のあう日本の友達とSNSでコミュニケーションし、一時帰国時にはいっしょに楽しい時間を過ごしています。
日本語のほかには母語のスペイン語、バレンシア語、英語を習得し、現在は古代ギリシャ語、フランス語、ラテン語を学びながら、言語学のスペシャリストを目指しています。

目次

子供への日本語教育で失敗をくり返さないために

「なんとかなるさ。」で軽くはじめた日本語教育でしたが、道のりは思った以上にけわしく、様々な失敗を経験しました。

日本語教育法や教材など、良いと聞いたら手あたり次第にためし、失敗してはまたさがし、のくり返し。

子供のやる気も下がるいっぽうで、どうすればよいのか途方にくれた時期もありました。

そんな折に思いついたのが、日本語教育の土台をしっかりと作ること。

それは次のとおりです。

  • 海外での日本語教育の基本、一人一言語を徹底する。
  • 子供はなんのために日本語を覚えるのか?日本語教育の目標はなに?
  • 子供への日本語教育で守るべき家族のルール

この3つの項目を決め、きちんと守ることで、子供への日本語教育が格段に前進しました。

この記事では、この3つのうちのひとつ、日本語教育の目標づくりについて説明します。

※3つの土台づくりに関しては、こちらの記事に紹介しています。

海外での日本語教育でおこりやすい勘違い

私が子供にあれこれと日本語教育法や教材をためすうちに、なかなか良い方法が見つからない、またはやっても成果があがらない原因は、教育法や教材、子供にあるのではなく、私自身にあると気づきました。

知らず知らず無意識にやっていたことが、子供の学習環境を悪化させていたのです。

それは次のとおりです。

  • 子供に親の期待や好みを推しつけてしまう。
  • 子供のおかれた環境や性格、好みなどをじゅうぶんに考慮していない。
  • 海外在住の自分の子供の日本語レベルを、日本国内の子供のレベルに近づけようとしている。

私自身は『子供のため』と思って懸命にやっていたのですが、冷静にふり返るとそうではなかったのです。

たいていの親は、自分の子供の性格や好みをよく知っているでしょうし、私もそのつもりでいました。

そして、子供のことをよく知っているはずの私が、日本語教育法や教材を選ぶときには、自分の子供の現状を考えず、友人の評判やネットでのクチコミなどを参考にして、良いと聞くと自分の子供にも良いだろうと勝手に思い込んでいました。

そのネットのクチコミというのも、おもに日本在住の子供に対しての評判で、海外在住の子供に適したものかどうかはわからなかったのですが、日本の子供に良いなら、自分の子供にも良いだろうと深く考えずに判断していたのです。

そもそも海外在住の子供は、日本在住の子供と比較すると、日本語の情報量が圧倒的に不足しています。

日本在住の子供に評判のよいものは、日本国内の環境で学習するために作られたものであって、海外での子供の環境を考慮して作られたものではありません。

海外在住でも、日本国内と同様の環境がある場合は適合すると思いますが、海外でそこまで環境が整っているというのは稀なケースでしょう。

我が家も日本とは程遠い環境で、日常においては子供と日本語を話すのは私ひとり、しかも私は外で働いているので、子供と顔を合わせるのは一日にほんの数時間です。

その短い時間に日本と同様の方法を持ち込んでも、うまくいくわけがないのですが、そんな事にも気づいていませんでした。

そこで、今まで軽視してきたことを考慮しながら、限られた時間でできることをじっくりと考える必要がでてきたのです。

子供に合わせた日本語教育の目標づくり

あらためて子供の性格や好み、環境を確認して、私が実際に作った目標は次のとおりです。

ポイントは、子供が理解しやすいレベルで、少し低い目標にしたことです。

  • 日本語で日常会話ができるようになる。
  • 日本での日常生活で必要な基本情報を読んで理解できるようになる。
  • パソコンやスマホのキーボードを使って日本語が書けるようになる。

子供にこの目標を理解してもらうには、もう少し簡単な説明をしました。

  • ママや日本の家族とずっと日本語で話ができるようにしよう。
  • 大きくなって一人で日本に行っても困らないように、日本語が読めるようにしよう。
  • 日本の家族やお友達にメッセージが送れるようになろう。

そして目標は達成したら少しずつレベルを上げるようにしました。

日本語で日常会話ができるようになる

子供の将来の夢を聞いてみると、この先もずっと拠点がスペインになる予定でした。

そこで当面、最低限の日常会話ができるようになることを目標にしましたが、実際には目標以上のレベルになり、同世代の友達と流行り言葉を使って話したり、目上や初対面の人に丁寧語を使ったりできるようになりました。

現在は敬語の習得を目標にしています。

日本での日常生活で必要な基本情報を読んで理解できるようにする

この目標を決めるにあたり想定したのは、自治体から配布されるお知らせやタウン情報誌など。

最近は自治体によっては外国人向けのサイトも設置されていて、ふりがな付きのやさしい日本語で説明されているので、その程度の情報を読んで理解できたらよいと考えました。

実際にこの目標でスタートして、現在は大人向けの一般的な小説や雑誌も問題なく読みこなしますので、最初の目標設定が低くても、やり方次第で伸びます。

そして今後の目標は、ビジネス用語の含まれる文章や、新聞の内容を理解することです。

パソコンやスマホのキーボードを使って日本語が書けるようになる

まず、手書きは途中であきらめました。

その理由は2つあります。

  • 日本国内の日本語教育と海外でのそれとは性質が全く異なり、海外の子供には手書き学習が非効率的である。
  • 最近は一般社会で手書きをほとんど必要としない。

日本国内で重要視される書き取り学習をやらないのはどうしてか、私なりの理由を次に詳しく説明します。

日本国内と海外の日本語教育のちがい

まず、日本在住の子供たちは、たいていが生活のほぼ全ての時間を日本語で過ごしているのに対し、海外在住の子供たちはほとんどの時間を現地語で過ごしているので、日本語を使うのはほんの限られた時間です。

たとえ家庭内で日本語を使っていても、現地校に通う場合は現地語を使う時間の方が多くなります。

両者の日本語の情報量には圧倒的な差があります。

つまり、日本在住の子供たちは、書き取り学習をはじめる前から日本語がしっかりと頭に入った状態なので、書いたものを記憶する力がじゅうぶんに備わっています。

いっぽう海外在住の子供たちは、じゅうぶんな日本語を知らないうちに書き取り学習をしても、知らない言葉を絵のように書いているだけの作業になりがちです。

その状態では、いくら時間をかけて書かせても頭に入らず、子供の学習意欲も下がるので、効率の悪い学習になってしまうと考えました。

わからない勉強ほどつらいものはないのですよね。

特に漢字の書き取りは、その言葉の意味を知らずに書いても覚えられません。

そこで、漢字の書き取り学習を取り入れるのは、いっさいやめました。

最近は一般社会で手書きをほとんど必要としない

また、最近は手書きで文章を書く機会はあまりないので、少ない学習時間を書き取り学習に使うよりも、一番使う頻度の高い会話学習に使った方が効率的だと考えました。

もちろん、書けた方がよいに決まっていますが、日本語の環境がほとんどない中では、さらに書く機会は少なく、ほぼ無いに等しい状況です。

そのわずかな機会のために、なん時間もかけて学習をするのは、やはり非効率的だと考えました。

また、よく言われる『書くと覚える』というのは、前述したとおり、日本語がじゅうぶん頭に入った状態でこそ達成できることではないかと判断しました。

私はこの目標を決める前まで、子供にひらがな、カタカナ、漢字の書き取り学習をやらせていました。

ひらがな、カタカナは本人が理解できる言葉が多かったので効果がありましたが、漢字は2年生程度でつまずき、それ以降はやめました。

それでも現在は常用漢字を正確に読んで理解し、キーボード変換でも正しい漢字を選んで書くことができるようになっています。また、最近は本人がみずから漢字の書き取りに興味を持ち、スマホのアプリなどで練習しています。

以上が実際の目標づくりとその結果です。

子供は十人十色、それぞれが違いますので、性格や好み、日本語の理解度、将来のビジョンなどを考慮したうえで、子供がわかるレベルで、確実に達成できる目標から試していくのがよいでしょう。

この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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